Presented By 渚トオル
主な登場人物
『翼がほしいな』 誰もいない放課後、私はクラスメイトに押し付けられた掃除をやっている。本来なら適当に終わらせるべきなのだろうが、私はどうもそれができない。後で何をされるかわからないから。そんなことで掃除をしていたのだが、ふと、一枚の封筒が落ちていることに気が付いた。拾ってみて中身を見ていると、なんと5万もの大金が入っているではないか。こんな大金、落としたやつはさぞ困っているだろうと思い、私は即先生に報告しようと、その封筒を持って職員室にいこうとし、廊下に出た、そのとき、一人の生徒とぶつかった。まさにそれが始まりだった。 「おい、何でそんなもの持っているんだ。それは俺のだ。」 そういって、譲司が私から封筒を奪う。 「いや、それは教室に落ちていたんだ。それで大金はいっていたから先生に…。」 「おまえがやったんだろう。そうは見えないのにな、後でしごいてやる」 そういい捨て彼は私から逃げるように遠ざかっていった。なんだかいやな予感がする。(これって、いじめの典型的パターンなのでは…)はめられたんだ。そう思ったときにはもう遅かった。 これ以来、私はずっといじめられつづけている。無罪の罪を負わせられて…。 今日は特に冷え込み雪もまばらに降り出してきていて、あたりはもう暗くなり始めている。私はまたいつものように学校裏の雑木林に呼び出されていた。 「おお、今日は雪が降っているじゃないか。」 「コリャ楽しそうだ…。」 などという声とともに譲司を筆頭に連中が姿をあらわした。 「あ、痛い」 姿が見えたとたん赤い光とともに右腕に痛みを覚える。そこを見てみると、何かに焼かれたような跡がついている。 「どうだ、この殺傷用高性能レーザー銃は。」 ああ、あの赤い光はやっぱりレーザーか、ほんとに彼らはどこか精神に以上をきたしているようだ。よく平気でこんなことができるものだ。 「また君たちか、本当に好きだね、そんなに私をいじめて楽しい?」 そういったとたん連中が体当たりしてきた。勿論スタンガンを持って、だ。 「あぁぁぁ、」 またこれか…。これでもう一週間目だ。 「よくわかっているじゃないか。そうだよ、君はいじめがいがある。」 「そうそう、普通の子と違ってかわいいし、しかも泣き喚いたりしないでじっと我慢するもんな、しかし、君はこうされるだけの事をしたのだ、それを忘れるな」 連中は高らかに笑って私に近づいてくる。また連中がレーザーを持ち出したので、すかさず叩き落してやった。それがいけなかった。 「おい、何するんだ、おまえ」 (まったくそれは私のせりふだ) そういって彼らは容赦なく私に暴力を加えてきた。それが一段落ついたと思ったら、連中は何やら私に質問をしてきた。それは私が一番恐れていたものであった。 「そういえば、君、やっと友達できたんだって?」 一瞬びくっと反応してしまった。が、絶対にあの人には迷惑をかけてはいけない。そう思い、何とかごまかそうとした。 ――今まで私は友達はいなかった。いたとしても、自分で開発した人工知能ソフトウエアでシュミレートした架空人物だ。しかし、最近ネットでプログラミング仲間ということで神崎 誠と知り合ってそれ以来、お互いに家に呼んだりしている唯一の親友だ。私が今まで自己を投げ出さずにいれたのも、彼がいたからだ。 「え、友達ならこのMOの中に入っているけど。」 我ながら淋しいことを言っているとはわかっている。彼と出会うまではいつも平気で使っていた言葉。そう思うと、みように悲しくなってくる。 「うそを言うな、ちゃんとおまえが友達と肩を並べて歩いているところを見たんだ。」 「それは間違いだよ。私にいるはずないじゃない。」 そう、私には友達などいなかった。昔は友達もいろいろといた、しかし、その友達と一緒にプログラミングコンテストに出て、優勝して以来、彼らはとたんに私を無視するようになった。それから少したって気づいたのだが、彼らは、本当は私をただの『プログラマー』としてみていたらしく、友達でもなんでもなかったらしい。そこで私は初めて裏切られたことを知った。と同時に、私は友達とするほどの価値はないということを思い知らされたのだった。それ以後、現実の人間とは深くかかわらないようにしている。 そんななか、彼は、私を、利害関係ではなく、本当の親友として扱ってくれた。私にとっては初めてのことだった。高校に入り初めて教えられたことがその、『人間関係=利害関係』ということだったから…。 だから私を大切に扱ってくれている彼と同じように彼を大切にしたい。 「いや、ちゃんと名前もサーチしてきた。神崎 誠ってやつだろう。あいつもなかなかいいやつなんだよな。それでさ、そいつの携帯の番号教えろよ。」 「だからいないって、」 彼らに教えたりでもしたら、多大な迷惑をかけてしまう。だからなんとしてでも言ってはならなかったのだ。 案の定、彼らはどうも切れたらしく、私を容赦なく痛めつける。しかし、私は、決して言わなかった。最後には二の腕をあらわにされ、そこにナイフを当てられ…。 周りの雪は、鮮烈なほど赤く染まっている。私はそれでも言わなかった。普段は、それでもう、連中は帰っていくはずだったが、今日はいつもとは少し様子が違っていた。 「いいから、教えろ。それともなんだ?自白剤使われたいか?」 「じ、自白剤!!」 なんてそんなものを持っているだと思ったとき、連中の一人がそれをもってきた。 その注射器を見て思い出した。過去に、電子バイオ科のある生徒が中枢神経コントロール剤をコンテストに出してたたかれていたというのを聞いたことがある。 (神崎君、ごめん。) 私はついに、神崎君の携帯の番号をしゃべってしまった…。 連中は早速、携帯で神崎君を呼び出す。 神崎君がくるまで私はずっといじめられた。そのあいだ、腕からは絶えず血が流れ出て、周りの雪を更に赤く染めていった。 「僕だけど、何のよう?」 神崎君がきたようだ。そしたら連中は 「君に見せたいものがあるんだが…。」 そういって、私のところに神崎君を呼んでくる。こんな姿を見られたくない。そう思い私はその場から逃げようとしたのだが、彼らの連中がそれを許さない。そのうち神崎君がきて、 「まさか…。君たち、何をやっているのかわかっているのか?」 神崎君は私をみて、酷く驚いたような顔をしていった。確かに、普通の人なら驚くだろう。腕からはちが流れ、周りの雪を赤く染め上げている。 「ああ、わかっているとも。君もやるかい?」 「何を馬鹿なことを。警察に通報する。」 彼は、怒りを抑えているからこそ、更に冷たく、静かな口調でいう。 「ま、ご自由に…。撤退!」 とたんに、やつらは分散して逃げていった。 やつらがいなくなったのを確認して、神崎君が私に近づいてくる。 「大丈夫…じゃなさそうだね…。」 「ううん、大丈夫。まあ、よくある事だからね…。」 「よくあることって、そんな…。」 神崎君は心配そうに私を抱きかかえてくれる。 「いや、気にしないで、大丈夫だから…。」 そういって私は思い体を立ち上がらせようとした、がやはりこれだけの血が流れているのだ、急に力が抜けて、その場に倒れこんでしまった。 「やっぱり大丈夫じゃないでしょ…とりあえず、僕の家にでもきてみる?」 そういって神崎君は微笑んでくれた、私は神崎君の家に行くことになり、僕は神崎君におぶさって行った。初めておぶさって神崎君の背中が意外と心地のいいことに気づいた。神崎君は立ち上がるとゆっくりと揺らさないようにして、家の方向へ歩き出す。その規則的な振動に、眠気を覚え、半分神崎君の感触を楽しみながら・・・半分うとうととしながら・・・目を閉じたまま心地よいまどろみを感じていた…。 「ついたよ。」 そういう声が聞こえて、私は目を覚ました。どうも神崎君のうちのベッドの上にいるようだ。あまりにも気持ちがよく、私は途中で寝てしまったのだ。 「ちょっとそのままじっとしててね。」 そういって、彼は部屋を出た、そしたらすぐに医療用具の入った救急バッグを持ってきて、私の傷を手当てしてくれた。 「そういえば、彼ら、なぜ君をいじめてたの?」 「きまってるじゃない。彼らはアンチ治安維持委員会メンバーだよ。」 「ああ、あの治安維持局反対派のメンバー?」 「うん、それ、やつら、ターゲットを見つけてはいじめて、また見つけてはいじめて、とそんなことばかり繰り返している。今回は僕がターゲットになってしまったようだけどね。」 そうなのか…、そういって彼は私の手を握り締めて、つぶやくように言った。 「片桐君、強いね。僕だったらもう学校に行かずに、泣きじゃくっていたと思うよ。」 「…いや、そんなに強くないよ。以前は泣いてたもの。」 最近はもう体も精神も傷がつきすぎてぼろぼろだからなのかな。何されても全然なんとも思わないようになってしまった。もうそろそろ私も限界かな。いじめられて泣けるってことはまだ、心はきれいだってことなのかもしれない、と思う。 「…」 「ごめん、変なこと言っちゃって、どうかしてたんだ、ごめん。」 一瞬の沈黙の後、 「さて、これで終わり、全部手当てしたよ。」 「あ、ありがとう、だいぶ楽になったよ、」 「いえいえ、ところで、今から何か用事ある?もしよければ家に泊まっていってほしいんだけど…ちょうど明日は休みだし。」 私はそういわれて、なんだかうれしくなった。今夜は孤独感でよる泣いてしまうこともなさそうだ。神崎君がいてくれるから…。それから私は神崎君と遅い夕食を取り、いっしょに寝ることにした。 ベッドには神崎君がよこになっていて、私は床に敷いてもらった布団で横になっている。 「僕が下で寝ようか?」 「ううん、いいよ、僕が無理言って泊めてもらってるんだから。」 「それじゃあ、ちょっと狭いかもしれないけど、ベッドでいっしょに寝ない?」 そういって彼は私のために布団を少し上げてくれる。 「え、いいの?」 「うん、おいで…。」 少し気恥ずかしい気はするが、私はその彼が作ってくれた空間にもぐりこむ。神崎君の体温が直接伝わってくる。とても暖かくて気持ちいい。 「私、もう疲れちゃった。私なんかやっぱり誰も必要としないのかな」 しばらくの間沈黙、そしたら神崎君が慰めるように静かに私に言う、 「僕もわかるよ、その気持ち」 「神崎君のような人気のある人にはわからない」 そういうと、神崎君は遠い眼差しで私を見つめる、 「判るのは淋しいひとみの持ち主の気持ち。池田君はどうか僕のようにはならないで。」 そんな、私が神崎君のようになれるはずないじゃないか…。とそんなことを思っていたら神崎君がまた私に話し掛けてくる。 「それに、君はまだ疲れてはいけない、人は疲れ果てるまで地を歩かなければならない、そして、本当に疲れ果てたとき、初めて神様は僕たちに翼をくれる、もう歩かなくてもいいように…。そういって神は僕たちに生きる苦しみを与えたんだ。でも、それと同時に、生きる手いる者にだけ幸せも与えてくれた。」 確かに神崎君の言うとおりかもしれない…でも…。 「でも、最近思うんだ。本当に幸せってあるのかなって…つらいことが多すぎて…。」 「ねぇ、知ってる?神様は、もうひとつ、余計なものも、人に教えてしまったの。」 「よけいなものって…、」 「自らの手で翼を手に入れる方法。すなわち、自らの命を絶つこと。でも、そのようなことは決してしてはだめ、人は生きるために生まれてきたのだからね。」 彼はそういいながら私を強く抱きしめてくれる、そして、 「死んだら、楽しいこととか、うれしいこととか、なにもなくなってしまうでしょ。だから、君はまだ疲れちゃ駄目、必ず、いいことがあるから、ね。そして、自分はいらない人間だとは思っちゃ駄目、かならず、君を必要としている人はいるから。」 なんだか、神崎君の話を聞いていると、自分が以下に馬鹿なことをしようとしていたのか改めて気づく、そして、私は決して一人ではないということを改めて思い知る。 ――そうだった、神崎君がいてくれる…。 そう思うと、なぜだか、 最初は一筋、 やがて涙はとめどもなくあふれていった。 彼はあふれ出た涙を唇で吸う…そして、 「そ、れ、に…。」 「ん?」 「僕はどこまでもいっしょについていってあげるから、一緒に地を歩いていこう。だから、そんな悲しそうな顔しないで。」 神崎君の顔がほんとの至近距離にある、私はなんと美しいのだろう、と思わず見とれてしまった。それから、僕は幸せな気分で眠りの神に身をゆだねた…。 次の夕方ごろ、少し寒気がして目がさめた。おきてすぐ、神崎君がいなくなっているのに気付く。ベッドの横には一枚の紙切れが置いてあった。 「やつらから学校の屋上へこいという連絡があった、後で何がおこるかわからないのでちょっと行ってくる。」 と書いてあった。 何も起こらないはずはないと知りながらも、私はそう願い、私は神崎君が帰ってくるまで待っていることにした。 あたりはもう暗くなりはじめている。屋上には誰もいないのでこちらから話し掛ける。 「僕だが、用件はなんだ。」 と、僕は言ってみた、すると。 「さて、きたきた、やってしまおうではないか。」 そういう声が聞こえたと思ったら、施設の裏からやつらが出てきて、僕の周りを松本筆頭に囲む。 「用件が知りたい?教えてやろうじゃないの。俺たちは粛清を加えにきたのだ。」 粛清ねえ、まったくアンチ治安維持局はのやつらがよくいったものだ。ただいじめたいだけなのに。 「なるほど、それで何をするというわけ?」 「こうするのさ!」 そういい、彼は僕をおもいっきり蹴りこむ、 「うっ!」 鈍い音とともに、あまりの衝撃に僕は倒れこむ。 「わかったか、これが片桐にみかたしたものの罰だ。」 そういい、彼は勝ち誇ったようにして僕を見下す。僕は、彼を睨んで言う、 「君たち、はなぜ君らは片桐君をいじめる?」 真の理由はただ楽しいからなのだろうとは思うが、一応聞いてみる。勿論、それは後々の戦略を考えてのことだが…。 「なぜって、俺らはただ仕返しをしただけなんだがねえ、」 「仕返とは?」 「片桐が俺の探していた、5万の入った封筒を持ってたんだよ。」 「はあ、それが理由。」 と、そこで僕ははじめて、片桐君がそれを理由で、今までいじめを受けているということを知った。純粋な青年をよくまあ陥れて楽しむなと酷いと思うのと同時に、そのあまりにも稚拙な戦略に半分あきれたりもする。 「そうだが」 「ふーん、子供っぽい理由だね。僕にそのようなものが通じると思ったわけ。」 そういって、神崎君は連中に挑発的な視線を送る。 「やかましい、だまれ!」 といい、何処からもってきたかは知らないが、僕の体を鞭でたたく。 「痛い!…君たち…そのようなことを…して許されると思うの。」 「ああ、俺を侮辱するからだ。」 そういってますます強く僕の体に鞭を入れる。僕は初めて片桐君のつらさがわかったような気がする。 「起きろ、神崎、いいもの見せてやろう。」 そういうこえて、僕は体を起こした。どうも途中で気を失って倒れてしまったらしい。体中が酷く痛む。彼らは残虐的な笑みを浮かべてこちらを見ている。僕が何か言い返そうとしたとき、やつらの仲間に連れられて、誰かがこちらに向かってきた。それが片桐君であると認識するのにそう時間はかからなかった。 「片桐君、どうしてここに!」 神崎君は驚いたようにして私に問い掛ける。その神崎君はというと、まだ冬なのに上半身は裸で、何か細いものでたたかれたような蚯蚓腫れが何本も体を走っていて、悲惨な状況だった。私のせいで神崎君が…、そうとしか思えなかった。(やっぱり私は忌むべき存在なのだ…。) 私が驚きのあまり、声も出ないでいると、松本が 「俺が呼んだんだ。片桐君にはやってもらいたいことがあってねえ」 そういい、彼は神崎君の両腕を後ろ縛りにすることを指示する。それが終わるのを確認して、彼はまた私に話し掛けてくる。 「片桐、おまえ、神崎の顔なぐれよ。あ、蹴ってもいい。とにかく神埼をいためつけてやれ、いつも俺たちにやられているようにな。」 そんなこと、できるはずもない。私を大切に扱ってくれる神崎君にそんなこと…。 「そんなことできない。」 そう私は言った。そしたら、 「なら、代わりに俺が神崎を痛めつけるか?」 「そんな悪辣な…君たちはそれでも人間か?神崎君に手を出すな」 「ああ、そうだとも、それより、一発でもいい、早くしろ。そしたら帰ってやる。」 夜空は急に雲に覆われて、雨が降り出してきた、 「そんなこと…できないよ…。」 私は半分泣きそうになりながらもそういう。そういったとき、やつらは神崎君を殴る。 「うっ!」 神崎君はそう鈍い音とともに倒れる。そのあまりにも残虐な行為を目の当たりにして私はもうどうしていいのだかわからない。 「片桐が悪いんだぞ、はやく殴ってやれ、そうすれば帰ってやるから。」 と松本は言う。 神崎君のほうを見ると、神崎君は私に微笑んでくれる…。 (神崎君、ごめん。本当にごめん、許して…) 私は神崎君を殴る。当たり所が悪かったようだ、切れて口から血が…。 「ほお、それでいい、なかなかいいものを見せてもらったよ。では、解散することにしよう。」 そういい、彼らは高らかに笑いながら帰っていった。 もうこんなのいやだ、何で神崎君まで被害に会わなきゃいけないんだ。やっぱり私が悪いんだ。私が生きているから…。 「本当にごめん、神崎君までまき沿いにしちゃって、」 「ううん、いいの。きに…しないで」 「私、邪魔だよね。いたら他人に迷惑ばかりかけてしまうね。いいの、もう、さようなら。」 私は泣き笑いながら屋上から飛び降りた。そう、もうこれしか方法がないから…。 これ以上他人に迷惑かけてはいけないから。 私が飛び降りた瞬間、なんと彼もいっしょに飛び降りてきたではないか。 「だめだ、そんなことをしたら」 私は叫んだが間に合わなかった。 彼もまた屋上から飛び降り私を目指して落ちていく。 「何を言っているんだ、僕が君を守る」 そう聞こえた次の瞬間、誰かに抱かれていることに気がつく、 そして、大きな音とともに地面にたたきつけられた。 いてぇ、そう思って私は起き上がった。傷はほぼなかった、かわりに…。 「ね、ねえ、しっかりして」 私は彼を抱いていた。私を守ろうとし、私の下になってくれたのだろう。 私の下で彼が倒れている。 (神様、彼をもっていかないで…。)そう願いながら、私は緊急治療装置を神崎君の体に当て、始動する。しばらくしてから完了の音がなった。それと同時に神崎君が目覚めてくれた。私はうれしくて、思わず涙ぐむ、 でも、僕はまた、生き延びてしまった。死のうと思っていたのに…。僕は神崎君に言う。 「どうして…神崎君まで飛び降りたの。」 「あたりまえだろ。君が飛び降りるところを黙ってみているわけにはいけないだろう」 「そんな、私がいなくなればすべて解決するのに」 「それはちがうよ、自分の犠牲によって他を助けるという考えはただの自己満足にしか過ぎないんじゃないかな。第一、そうやって助けられた人が気持ちよく生きていけうと思う?僕は長生きするより、君と少しでも一緒にいるほうがいいな。」 なんだか、私は自分の言ったことが酷く恥ずかしいように思え、思わず泣きそうになる。 それを感じ取ったのか、神崎君が、 「片桐君のいない世界で生きていくのは僕にはつらすぎるよ…。」 「いや、なんでもない。ごめんね、少し言い過ぎたかな。僕はただ、自分を大切にしてほしいなと思っただけだから。」 神崎君は私を安心させるように、抱きしめてくれる。私も神崎君を抱き返す。 いつまでそうしていただろう。雨はもうすっかりやんでいた。 「雨、あがったね。」 「うん」 「雨上がりの夜空ってきれいだと思わない。空気もすんでいるし。」 神崎君は美しい夜空を見上げながら私に言った。 「うん…なんだか、星々が私たちに何かを語りかけているかのように瞬いている…。」 そういって、私も満天の星空を見上げる。 「そうだね…、ねえ、片桐君?こう考えたことはない?『星は大昔から広大な宇宙の中で、ずっと同じ位置でずっと輝きつづけている。なのに人はこういつも争ってばかり。』そう考えると、人がいかに罪深き存在か思い知らされてしまうような気がするよ。」 そう、神崎君は夜空を見上げながらいう。その横顔はどこか淋しいような気がした。 「・・・だからかな、夜空の星々を見ていると、いつも心が和むような気がする。」 そう私が言うと、しばらくの沈黙のご、 「僕も…そうやって星々は人に語りかけてくれて、慰めてくれるのかもね。」 「・・・。でも、人は星にはないものももっているよね。たとえば親友とか思いやりとか…。そう思うと人も案外捨てたもんじゃないかも…。」 神崎君がいれば私は私でいられるから。 「・・・」 「あ、いけない、もうこんな時間だ。それじゃあ、もう帰ろうか。」 私は時計を見ながら、そういう。もう時計の針はもう12時をさしていた。 「うん…、そのまえに、ちょっといい?」 「え、なに?」 そういった瞬間、神崎君の腕が私の首筋に伸び、唇をあわせる。私、神崎君とキスしてる。私はこんなこと初めてだったので一瞬と惑った。が、とてもうれしかった。そう、神崎君も私と同じ気持ちでいてくれたから…。 そのご、神崎君が、 「男同士だから変だと思われるかもしれないけど、ずっとこうしたかった…。君が好きだから…。」 そういい、神崎君はなにやら意識を集中させる。 突然、神崎君の背中から一対の黄金の翼が現たではないか。この翼は本物なのか?と自分の目を疑うが、夜月に照らされたその姿があまりにも綺麗で私は一瞬見惚れてしまった。 「これを見て、生きている人間はもち得ない翼。そう、僕、一度自分の人生をキャンセルしたんだ。君のようにいじめられてね…。そんな僕でよければ、僕も君を愛したい…。駄目だろうか…。」 「ずっとまってた…。私も…好きだったから…」 そういって、今度は私のほうから神崎君を抱きしめキスをする。 ふたりは美しい夜空の下で月の明かりに照らされて、いつまでも抱き合っていた。 「そういえばさ、片桐君って一人暮らし?」 突然彼はこんなことを聞いてきた。戸惑いながらも私は答える 「そうだけど。家が学校から遠くて今は私だけ学校の近くのマンションに住んでいるんだ。」 そういったら、神崎君は私に甘えるようにいう。 「ねぇ、せっかくだから空とぶ都市にいっしょにすまない?あの都市のもっと上に一戸建ての家が用意してあるんだ。花火なんかがいえと同じ高さで爆発するから花火大会のときとかすごくいい眺めかも…。 親には内緒でさ、ぜひきてくれないかな。ぼくも家が遠くてマンションに住んでいるんだけど淋しくて…。」 ん?空飛ぶ都市ってなんだ?と思い聞いてみると 「それはいってからのおたのしみ」 と神崎君が笑っていった。 なんだか私はときめくようなものを感じた。あまりにも幸せでめまいがしそうだった。 「いいよ、とても…うれしい…。」 「それじゃあ、いいんだね。よかった。」 とても幸せだった、やはり神崎君の言うことは正しかった。これが生きているときだけの幸せというものなのだろう。私は「もう自殺なんて絶対しない」とそう決めた。 その夜、私は空にある家に神崎君と一緒にいき、神崎君の夜でも輝いているのがわかるほど、綺麗な黄金の翼の下で眠った。 例の治安維持局は1週間後解体された…。それいらい、学校の非行が極端に減ってみんな生き生きと学校へ通えるようになってきた…。やつらも、おとなしくなって私に謝罪を入れ、いまでは非行をしなくなり、普通に学校にきている…。 学校のみんなは手をつないで一緒に登校してくる片桐君と神崎君をみて「怪しいがこの世で最も美しいものかもしれない。」と言い合ったらしい。 そうして、神崎君との新しい生活が始まった。 今回のテーマは、「親友」ということで書いてみました。 しかしまあ、どうも私が小説を書くとこのようなものになってしまうみたいです。 そういえば、今回の小説、盛大に狂ってます(苦笑)。しかも詰め甘いし…。途中まではいいんですけど…。 神崎君が天使だったり、巨大都市が空に浮いてたり、変なジェネレータが出てきたり…。ちょっとSFはいってます。やっぱりこの小説を書いているとき、最近蔦谷で借りてきた「ホルスト『惑星』管弦楽組曲」を聞きながらかいたから、それが深層心理に影響したのかも。それに『ファイヤ ミルクテイスト』のんでいたのも影響あり? ちなみに、ジェネレータの話、一応ある本の宇宙論を参考に私が勝手に創造して作ったオリジナルです…。しかしまあ、こんなもんつくれるかって。(笑) 親友、それは絶対の信頼を置ける者、そして心の扉を開き感情を共有できる者、 そして、間違った方向に進みそうなときそれを修正してくれるような、比類ない人。 というよう私としては思っています。勿論、このような完璧な人はこの世には存在しないでしょう。ですが、それを限りなく完全なものになるよう努力するのです。そうすることにより、人はより強くなれると、私は信じております。友達もいたほうがいいですが、親友は絶対に一人でいいです、持つべきだと私は考えます、そして自分に合った親友は目を見開いて周りを見ていれば、必ず見つかるでしょう。 浅く広くもいいですが、一番合いそうな人とは深く付き合うということも大切なことです。そうすることにより、より自分も進化できるのですから。 「ねえ、片桐君?」 「え?なに?」 そういって私は振り向く。 「生徒対策委員会ってしってる?」 ――生徒非行委員会、それは治安維持局とも学校とも独立した一部の生徒たちで極秘に組織されている非行対策組織。治安維持局、教員で手の負えない事件が起こると、極秘で調査し、解決する。生徒の間では「なぞの組織」として噂されている。 「噂で聞いたことはあるけど、何なのかは全然知らない…。」 「ほかの人には内緒ね。実は僕、その生徒対策委員会の…会長なんだ。」 「え!!」 私は本当に驚いた。なぜ自分に一番近い人がこのなぞの組織にはいっているのだ。私は動揺を隠せずに入られない。 「そんなに驚かないで、べつに治安維持局のような圧制体制を望む委員会じゃなくて、すべての生徒が気持ちよく学校にこれるようにするための委員会なんだから。」 そういい、彼は私を抱きしめ、髪を梳いてくれる。私は少し安心した。しばらくしてから、 「ということで、今回の事件、生徒対策委員会のほうで処理することにしようと思うんだ。必ず、やつらに痛い目を負わせれる。協力してくれる?」 「う、うん、いいけど…。何をするの?こちらでやつらに暴行を加えるのは反対だよ。」 「大丈夫、心配しないで。ところで、今から本部施設にきてくれない?」 「本部施設?そんなのあったんだ。」 「うん…僕と手をつないでほしいんだけど…そうしないと本部施設にいけない…。」 「いいけど。」 少し気恥ずかしい気はするが、神崎君ならいいや。そう思い、私は彼と手をつないだ。 「いくよ。」 彼はそういい、意識を集中させているようだ。そのとたん、なんと、神崎君の背から1対の黄金の翼が生えてきているではないか! やっぱり何度見ても信じがたい光景だが、月の光の元、彼の黄金の翼は美しくあたりの闇に浮かび上がり、その幻想的な光景はもはやこの世のものとは思えないほどだった。 私がその光景に見とれている間に、神崎君の翼はもう出来上がっていた。そして、 「それじゃあ、飛ぶよ」 そういい、果てしない美しい夜空に向かって羽ばたき始めた。 飛んでいる間、私はずっと私と手をつないで飛ぶ天使の顔を何て綺麗なんだろうと思って見とれていた。 そうしているうちに、どんどん高度はあがり、都市がだいぶ小さくなっていく。こんな高いところからおちたら…とおもうとぞっとするが、神崎君いるから大丈夫、なんてそんなことも考えていた。 雲の上まできたとき、私は驚きのあまり言葉を失う。 私の目の前には、映画「スターウォーズ」に出てくるような高層ビルの立ち並ぶ、超巨大都市郡が雲の上に建設されていた。 「これが、僕たちの総本部、生徒対策委員会だよ。そして、この都市こそ全宇宙を管理する銀河連盟本部。」 そう神崎君がいってそこを指差す。 「こ、これが総本部?」 「そうだよ、こことの都市は無人なんだけど、すべての建物は、コンピュータで管理されていて、24時間つねに、それぞれの建物で別々のデータが分散処理されている。」 「何でこんなに巨大都市なの?コンピュータだったらこんな都市要らないでしょ。」 「いや、ここの総本部ははほかの惑星・銀河とも超光速通信でつながっているんだ。そして、それらすべてを統括するのがここ、というわけ。だから、これだけの都市がいるの。」 私はまた驚く、別の銀河との接続?超光速通信?すべてはじめてきくことで、こんなものが存在するなんて信じられなかった。まして、そのトップに立つのが神崎君なんて…。しかし、これだけの巨大都市が雲の上に建設されているのだ、私はこの都市に少し興味をもつ。 「そういえば、ここの膨大なエネルギー、何処から供給してるの?とても普通の発電施設じゃ間に合いそうもないけど。」 ときいてみた、これだけの超巨大都市を半重力装置で飛ばしているのに、発電施設らしきものが何処にも見当たらないからだ。そういうと、神崎君が、説明してくれた。 「ここのエネルギーはすべて無から作られているといっても過言ではないんだよね。この都市の地下にあるジェネレータですべてのエネルギーをまかなっているんだけど、そのジェネレータはこの宇宙ができる原理を応用して発電しているんだ。 この宇宙は、宇宙の種となるもの、「時間・空間・物質のまったくない<無>の状態から量子的効果によって創生された素粒子のような時空がインフレーションと呼ばれる急激な膨張によって飛躍的に増大され、そのインフレーション終了時にできた、エネルギーに満ちた火の球体」、が無限に広がってできたものなんだけど、この量子的な揺らぎをジェネレータ内でつくりだし、火の球体という高エネルギー体になったときに、エネルギー変換して電気や水、その他いろいろなものに変えてこの都市に供給するようになっているの。 でも、このシステムは、無から無限のエネルギーを作れるという利点があるんだけど、どうやって無の状態を作り上げて量子的揺らぎを再現するかが難しく、しかも、うまく制御しないと無限に火の球体ができてしまうため、開発は困難をきわめ、開発・テストには相当の期間を要しんだよね。そして、やっと実用段階までこぎつけ、そして、いまこの都市で利用しているってわけ。」 は、はあ、よくわからないが、膨大なエネルギーが生み出せることはわかる。(だあらか、ワープを応用する超光速通信がかのうなのか。) 「ところで、この都市、誰が作ったの?」 「え、一応僕作ったんだけど…ほかの銀河の惑星の委員の人と一緒にね。宇宙位置の技術がこの都市に集結されている。」 「うそ、造れるはずないじゃない。」 「いや、設計図さえ読み込ませば勝手に作ってくれるという機械があってそれに作らせたんだけどね。でも、設計はとても大変だったけどね。」 もう、技術が現実離れしすぎていて私はさっぱり理解できない。そんなことを神崎君と話しながら、その都市のコントロールセンターへ向かう。 「この建物の中だよ。」 そういって彼は私をおろしてくれた。彼のその整った綺麗な顔立ちとその背にある黄金の翼が街灯に照らされて美しく輝いている。私たちは建物の中に入りエレベーターでそこへ向かう。エレベータにのって移動している途中で、あたりが明るくなり、透明なガラスを隔てた先の、壮大な自然を模した風景の数々が現れる。私はその風景が半分以上人工物だとわかっていながら感動せずにはいられない。さらに、エレベーターは下に進む。やがでその風景が分厚い壁に変わり、そして、最下層のコントロールルームに入った。 「ついたよ。」 そう彼はいって私を連れて部屋へ入る。私は機械だらけの部屋を創造していたがまったく別のものだった。窓からは美しい自然が映し出されている。そして、部屋の中は真っ白い壁で、端末を載せた大きな机がひとつ、そして、ソファがその机の前に向かい合わせに二つ置いてある。 彼は端末を操作しながら私を呼ぶ。そして、その端末を見たとき、思わず私は「あ!」と声を上げてしまった。その端末にはやつらが宴会を行っているところ写っていた…。 「どお?これ、衛星から送られてくるデータをもとに作ったんだ。」 「もしかして、これ、いまやつら、こんなことしてるの?」 「そう、僕たちはもう死んだと思ったんだろうね。そこでだ、少し仕返しをしたいのだけどどうだろうか?」 「え、何をするの?」 「やつらの近くに、5万円の入った封筒を送る。そして、彼らはきっとそれをもって外に出ようとするはずだから、すかさず、隣の高校の応援団をおくりこんで、やつらを痛めつけさせる。そう、君がまえにやられたようにね…。」 ――隣の高校の、応援団、その応援団はここのあたりでも有名の『恐ろしい団長』 がいるということで恐れられているところだ。 「それは酷いよ!やつらも一応クラスメイトなんだから…。」 「大丈夫、実際はやつらの脳のA10神経に衛星経由で接続して今言ったようなことが実際にあったかのように見せかけるんだ。そうすれば、まったく傷を負わせずにすむ。だって、やつら、こういうことでもしない限りあの根性はなおらないでしょ。」 「たしかにそうだけど…。でもやっぱり酷いような気が…。」 「僕としては、警察に捕まえられて少年院行きのほうが酷いような気がするな。そうならないようにするためにも、ああいうことをしなければならないんだよね。」 ディスプレイを見ながら、彼はA10神経接続して彼らに今言ったような内容の情報を送り込む。 とたんにやつらは一人演技でもやっているかのように動き出す。それがあまりにこっけいな様子だったので思わず笑いそうになる。二時間後、データ送信が終わると彼らは急におとなしくなり散らばって逃げていった。 「よし、成功。これで少しは懲りてくれるでしょう。」 「ほんとに大丈夫かなあ。」 「大丈夫、やつらのあの醜態をみたでしょ。絶対にもうあんなことはしてこないって。」 そういって神崎君は微笑んでくれる。 「そうだね。」 と私も返しておく。 「それじゃあ、帰ろうか。」 そんなことで、私はまた、彼と一緒に空を飛びながら帰った。 帰る途中、私はいろいろと神崎君と話していた。 「ねえ、片桐君? 片桐君はなんでやつらはあんな事すると思う?」 「それはただ、いじめは楽しいから…。」 やつらはどうせ私を使って遊んでただけなんだ。だから理由なんてないんだ。といつも思っていた。 「確かに、それもあるとは思うけど、僕としてはほかにも理由があるんじゃないかなっておもうんだ。」 「たとえば?」 「周りの環境に対するストレスとかそういったもの。彼らはストレスを発散させる方法を知らないから他人をいじめて解消してるんだとおもう。」 「周りの環境のストレス?そういえば、治安維持局のやつら、やつらがまだおとなしかったころから、見た目だけで警戒してたな。」 「そう、それが原因でああなったんだと思う。治安維持局はやりすぎたんだ。」 「うん、あそこの圧制体制派少々苦しいものがあるね。いろいろな考え方の人がいてもいいのにそれを一本化しようとしてる。」 「まったくだ、人はいろいろな考えを持っているからこそ面白いのにね。そこで、新聞委員会と連携して、治安維持局を廃止しないかい?ぜったいあの局はつぶれるだろうね。」 その後署名運動やビラまき等をやったら一週間で治安維持局はあっさり陥落した…。 |