小説  生と死 〜人の心〜

Presented By 渚トオル


主な登場人物
息吹いぶき さとる ―― この物語の主人公。控えめで、内気な性格の高校三年生。
         須崎先生とは仲がいいらしい。どうも友達は少ない。月下美人とよばれているが、本人はまったく気づいていない。
須崎すざき 夜月やつき ―― 暁の担任。数学を教えていて、生徒からもとても評判がいい。暁とは近所同士で仲がいい。
St.Peter ―― 聖ペテロ。ヴァルハラ(天国)の門の番人であり、裁きを下す天使。


Introductory chapter
一面に広がる暗黒の世界、周りにはたくさんの星が散りばめられている。
今まで見たことのないくらい、幻想的で美しい、それでいてどこか淋しい感じがする風景。
沈黙の世界。その中を一本の階段が永遠と続いている。
今私は、その階段を上っている…。

「しかし、ここは本当に静かだ…。あそことは大違いだ」
そんなことを思いながら私はその階段を上っていた。
その先、どのようなものがあるのか、まるで見当もつかず、ただ、
一本の階段を上っている。後戻りもできずに…。戻ったらまた、あの世界にもどっていかなければならないから…。
大理石でできたその階段を上がっていくうちに私は、かすかな光の存在に気が付いた。なんだろう?と思ってよく見てみると、
階段の一番上でなにか光り輝いている輪のようなものが二つ見えた。そして、その輪の下には、ギリシャの神話に出てきているような神々がよく着ているような服を着た人が二人、その後ろには暗く閉ざされた門のようなものが見えた。なぜか、体に悪寒だかなんだかわからないものを感じた。
そこで私はようやく気づいたのだ。
「そうか私はついにきてしまったのか…。この世界へ…。」

 息吹暁が今上っている階段こそ、すべての開放でもあり、すべての終わりでもある世界、
そう、ヴァルハラへ続く階段なのである。
そして、見えた二人の人こそ、そのヴァルハラの門の番人であり、裁きを下す天使、
St.Peter(聖ペテロ)なのだ。

この帰路のない道、ヴァルハラへの階段をなぜ自分が上っているのかを、
暁は上りながら振り返ってみることにした。


1st chapter: Don’t need me.
 あの日、私はいつものように、憂鬱な気分で授業を受けていた。
「また今日も体育がある。これがなければ悩みのひとつがなくなるのに…。」
もちろん、悩みは体育だけではない、対人関係など、その他いろいろなことがあり、
どうも最近は気疲れで授業に力も入らない。
「今日もエラー連発だと思うけど、なるべく邪魔にならないようにしよっと。」
そんなことを考えながら、私は上靴を履き、体育館へ向かった。
私は体育が苦手なのだ、小学のころはよく運動とかもしていたのだが、小学校4、5年生のときに、友達にいじめられ、体育で、酷い仕打ちを受けたことがあり、それ以来、もういじめられないと思いつつ、どうも体育になると憂鬱になる。
 とりわけ、今日の体育は特別だった。なぜなら、今年最後のバスケットの授業でチーム対抗戦をやる予定になっていたからだ。「私が変に動くと、絶対にエラーする」そう思うと、ますます気が重くなっていく。
 その試合で私の進む道が変わってしまうことになるとは私自身、まだ気づいてもいなかった。

一ヶ月前。そう、このバスケットボールの授業が始まったとき、みんなはとても喜んでいた。どうもバスケットボールが好きらしい。なので、授業が始まる前からクラスメイトはみな体育館に行って練習をしていた。
 「体育ができる人はいいな」と、私はつくづく思う。なぜなら、体育の授業で何も悩まなくてもすむからである。私にとって体育の授業は悩みの種の一つなのである。まして、今回からは、最も苦手とするバスケットボールだ。
「先生が来たぞー」
誰かの合図でみな、いっせいに整列する。
(ああ、とうとう始まってしまうのか…)などと、ため息をつきながら私も列に参加する。
「みんな喜べー、今日からバスケだ。」
「おおー、まってました。」
即生徒から歓声が上る。まったくおおっぴらに喜んでくれるものだ。と思いながらも、ここは抑えとくことにした。そう、こういう時は周りに合わせるのが一番だと経験上わかっているからだ。
準備運動、チーム分けが終わって、早速試合に入る。「今回は無事単元が終わってくれ」私は今まで裏切られつづけた体育の神に祈った。だが、後で現実はそう甘くはないのだということを思い知らされる羽目になるのだった。
 ピー、試合開始。
合図があったとたん、みな自分のポジションに入り相手チームの主力メンバーを抑えている。一応私も所定の位置についた。みんなそれぞれ自分のポジションできちんと動いている。私もまねをしてきちんと動こうとしたのだが、どうも先に読んできたルールブックにはない状況が多くどのようにして動いたらよいのかわからない状況で、ただ、ボールからある一定の距離を置いた状態で走っていた。そのとき、突然「おい、暁」そういう声が聞こえたとおもい、声のほうに振り向いたら、なんと、私のところにボールが飛んできているではないか。私は慌ててボールを受け取りドリブルをはじめた。が次の瞬間、目の前を
誰かが通り過ぎた。そう気づいたときはもう遅かった。ボールは相手チームにわたってしまい、あっという間に点数を入れられてしまっていた。
「おい、なにやってるんだ」
そういう怒鳴り声がきこえてきた、それとともに、
「やっぱりあいつは駄目だな。」
「まったくだ、あいつにパスした俺も迂闊だった。」
「そうそう、ま、今度から気をつけよう」
というような会話も聞こえてくる。その後、私のところにボールが回ってくることはなかった。周りからは
「暁君はほんと体育できないよねー、勉強は最強なのに」
「まったく、あんなやつがいるから困る」
などという会話が聞こえてきた。だからいやなのだ。私だって一生懸命やっているのに。それに、ただのゲームなんだからそんなに怒らなくても…。と思った。厄介なことになるのを避けるために、一応授業終了時に謝っておいた。
 これがすべての始まりだった。その後、試合が終わったとき、我がチームは負けていた、
体育館を出るとき、同じチームの生徒に声をかけられた。
「放課後、学校裏R20-04区域に来い。」
そういって彼は教室に戻っていった。これからいったい何が起ころうとしているか。私は容易に想像できた。だが、いかなかったらもっと厄介なことになる。そう思って私は放課後、重い足取りで、学校裏R20-04区域にいった。
 学校裏R20-04区域―それは以前から生徒の間でも噂されているいわば「死の区域」そう、まったく人通りがなく、しかも学校の防犯設備の管轄外にある廃屋のことであった。そこに呼び出された生徒で無事に帰ってきた者は…いない。
 そこには案の定、私を呼び出した生徒とそれに関連する連中が集まっていた。そして私を睨んでいる。私はそういった周りの生徒には気づかない振りをして呼び出した生徒のところへいき、用件を聞くことにした。
「ところで、用件は何?」
と私は聞いた、すると、彼はかすかに微笑みながら言った。
「ほう、なぜ呼ばれたか君は知らないようだねえ。君が一番よく知っているはずだが」
そんなことはわかっている。連中のしそうなことだ。とそういおうと思ったが、心の中でいうだけにしておいた。彼がそういい終わるのを待っていたかのように連中は私のところに近づいてきた。二人が私の両腕を後ろで縛り上げ逃げないようにしっかり掴んだ。そうしたら、彼が出てきて、なにやら話し始めた。
「まったく、君のように協調性にかける生徒がいるから、学校が楽しくなくなる。」
(私は協調性にかけることは一切していない。おまえらのほうこそ、この行為は協調性を欠く行為だとおもうのだが…。)
そのとき彼は私の腹をおもいっきり蹴った。
「う…。」
思わず、音にならない声を出してしまった。彼は残虐的な笑みを浮かべながら、
「ふ、これは罰だ。」
そういいながら、彼はポケットから黒い箱を出すと私のほうへ近づいてきた。
いきなり、体中を電撃が走る。
「うぁ…。」
彼はどうもスタンガンを使ってきたようだった、どうもしびれて、非常に痛い。
「さあ、もっと声を上げて…。ないてもいいんだよ。」
また彼は私の体にスタンガンをしつける。
「うっ…。なぜ…君はそのような…ことをする…。あっ」
「ほら、もっと泣け、そしてもっと喚くのだ…。」
その後も連中に何度も蹴られたり、殴られたりと、暴行を加えられた。
「ちっ、まったくしぶといやつだ、しかし、こいつ、よく見るとかわいいなあ。
 今日はこの辺で終わりにしよう。撤退!」
そう、彼は言うと、みな、部屋から出て行った。
「やはり、何も反応しなかったのがよかったのかな」と私はおもいながら立ち上がった。「以前はこんなこと日常茶判事だったもの…。」
 ――以前小学のころ、よくこのようなことがあり、その関係で、物理的に何かをされても声はまったくでないし、泣きもしなくなったのだ。
そう考えてみると、なんだか急に悲しくなってきた。私が以下に無力な存在なのかと…。
 その日、私は上を向いて歩いて帰った。


2nd chapter: Symphonic Overture
 家に帰っても誰もいない。静まり返っている。父も母も働きに出て行っていて深夜にならないと帰ってこないのだ。「こんな日は早く寝よう」そう思い、私はさっさと寝ることにした。
 だが、どうしても寝つけない。彼のスタンガンを持って残虐的に微笑していたあの姿が目から離れないでいる。初めてだった。あんな用に扱われるのは。今までだったら、ただ、暴行を加えるだけで、先生の力を借りればすべて鎮圧できた。しかし、今回のは別だ。やつらは先生の圧力など気にもしないだろう。それどころか、逆に私のほうに向かってくるような気がした。そう思うと、学校へいきたくなくなる。でもいつまでもそうおもっていても始まらない。私が寝付けないでいるとき、須崎先生から、電話がかかってきた。
このように、たまに、須崎先生から電話がくるときがあるのだ。
「最近大丈夫?どうも元気ないようだし、最近メールも着てないよ」
「いえ、大丈夫です。どうも最近調子が悪いだけなので。」
「それならいいのだけれど…。そうそう、いやなことがあれば寝てしまう、これが一番、『今日』は一日しかないからね、寝てしまえば今日は昨日になり、過去の記憶となり、忘れてしまおう。そして、明日は今日よりもよくなると希望をもとう。」
――はやくねてしまえかぁ。そうしよっと。明日はいい日になるといいな…。
  先生は、もう知っているのかもしれない、それはそれでいいか…。
先生にはげまされ、今度こそ本当に寝ることにした。

次の朝、学校に行った。いつもと教室の雰囲気が違う。私は教室に入ったとき漠然とそのようなことを感じた。自分の席にきたとき、昨日の出来事は昨日だけのことではないということに気づいた。いすが光沢を帯びている。というか、どうも水でぬれているらしい。やつらの仕業だ、そう思ったが、問いただしても意味がないだろうと思い、ただ、椅子をふくだけにしておいた。
そしてまた放課後呼び出されて、いじめられ…。それの繰り返しだった。いつしか、私はもう自虐気味で学校へ通うようになっていた。どんなことをされても抵抗するようなことは、もうしない…。

そう、私は必要ない。廃人同然なのだから…。

そんなことがあり、本当はこの試合には出るつもりはなかった。学校を休もうとさえおもっていた。しかし、親を心配させるのはいやだな。と思い学校にきたのだった。いざ、試合が始まるというときに、私はまたとてつもなく帰りたくなった、が、もう後戻りはできない。私は試合に出ることになった。もちろん、私の出番はないのだと知りながら…。
 周りの人はみんなそれぞれ、友達を和気藹々と会話をしている。それを私は横から見ている。私は、小学のころから、「どうせ生徒というものは、最後は裏切る」ということを思い知らされてきていたため、他の生徒とは深く付き合わないようにしている。友達は、一人でいいのだ、本当に好きなやつがいればいい。
 そういう私の気持ちにはお構いなしに、とうとう試合が開始された。試合は私抜きで、どんどん進んだ。我がチームは相手とほぼ互角だが1点差で相手のほうが優勢といった感じだ。最後の1分になったとき、なぜか、いきなり私にボールがきた、やっと私の出番がきたとおもって、この前のような失敗をしないよう、周りに注意しながら、相手側ゴールまで行った。そして、私がボールを投げたようとした瞬間、誰かが私の後ろにぶつかってきた。その拍子にボールの射出角が微妙に曲がってしまったらしい。ボールは無情にもわずかにゴールをそれて、落ちてしまった。ボールが落ちた瞬間、試合は終了した。


3rd chapter: Going To Among The Stars
試合を見ていてくれた須崎先生は、
「おしかったね、後にぶつかられなかったら完璧はいっていましたよ」
といってはくれたものの、他の生徒はみな寄ってたかって私を攻め立てる。なんと言われたかもう覚えてない。それよりも、ぶつかってきたやつが彼らの連中の一人だったということで、おかしいと思い、後から、携帯電話を盗聴していてわかったことだが、これは最初から仕組まれていたことなのだということに腹を立てた。一応テープに録音はしてあるが、やはり、彼を問いたてることはできない、逆にこちらの立場が危うくなる可能性もある。結局腹を立てただけで何も行動はしなかった。情けない…私はつくづくそう思う。

また学校裏R20-04区域への呼び出しメッセージが届いている。私はまたいつものことだろうと思い、そこに行ってみた。しかし、そこには誰もいなかった。よかったとおもって振り向こうとした瞬間、両腕をきつく押さえつけられ、気づいたときには、私は腕を後ろ縛りにされ、部屋の柱にくくり付けられていた。
「なんてことをしてくれたんだ、まったく。」
また彼が出てきた。本当にやなやつだ。精神異常者じゃないのか?
私はいつもどおり黙っている。
「ゴールの横にはおまえしかいなかった。だからボールを渡したんだ。それなのに、はずすなんて…。おかげで我がチームは試合に負けてしまったじゃないか。」
そういい終わると、左腕のワイシャツの上になにやら鋭いものを乗せられたような感じがした、
「なぜ君はそういうことをするのだ。理由を答えてくれ、これは君たちが最初から仕組んだことではないのか。」
次の瞬間には強烈な痛みとともに鮮烈なほど赤い血が出ているのが確認できた。
「痛い、」
「だまれ、おまえは質問する権利など…ない。」
そういって、さらにナイフを深く差し込む。
もう頭の中が真っ白で何も考えられない。今時分がどんな表情をしているのかもわからない。ただ、痛みと赤い血だけが私を支配している。
今度は別のやつが出てきて、またナイフを持って今度は私の首筋に傷をつける。
「こんなにかわいい顔をして…。あの時、得点入れていたらこんなことなかったのにな…。」
そういって、微笑み、私の首筋を更に切る…。
「頼む、やめて…くれないか。」
私がそういうと、彼らは私に殴る蹴るの暴行を加えてきた。そして、それがひとしきり終わると、今度は脚にナイフを突きつけられた。床が更に赤く染まっていくのがわかる。もう、声も涙も出ない…痛みもわからない。神経が麻痺でもしたかのようだ。だんだん視界が暗くなってきた。「これが死ぬということなのだろうか…これで死ぬんだったら…死んでもいい。」そう思っていたら、急に全身から力が抜けてきて、私は柱に寄りかかるようにして倒れた。
 でも、最後にもう一度…先生に…。
 

4th chapter: To The Heaven
それからどのくらいが経っただろう。誰かに頬を軽くたたかれるような感覚で目がさめた。
「先生…。」
「やっぱりここだったんだ。家に電話しても出てくれないから何かあったとおもってここに着たんだ。ちょっとまってて、今電気つけるから。」
電気をつけたとたん先生はかなり驚いたようだ。
「酷い…。」
確かにその状態は悲惨なものだった。両腕はずたずたに切り刻まれ、両足からも多量の血が流れ出ている。ワイシャツはほぼ破れ、そこから見える体はあざだらけであった。頭からも若干血が流れている。
先生が近寄ってきて、私を抱いてくれた。
「しっかりして、病院にすぐにでも行けば大丈夫だから。…誰にやられたの。」
私は初めて本当の人の心に触れたような気がした。とても暖かく、やさしいものだった。
ずっとこうしていたい…。体中の痛みが少しだけ和らいだようなきがする…。
「いいたくないならいいんだ、ただ、言ってくれたら僕もできる限り力になるから…。」
先生は私の血だらけの手を握ってくれる。
「…先…生、これ…みて…。」
私は、毎回いじめられるからということで髪の毛の中に隠しておいた超小型CCDカメラを渡した。
「…これに…全部入っています…。」
「これは…そんなに前からやられていたのか?」
「ええ、…でも…先生に…迷惑かけたくなかったから…」
「そんな、何でもいってくれればよかったのに、そうすればこんなことにならずにすんだのに」
「いいんです、これで、…私は…必要の…ない人間…だから…。」
そう、私はいるだけで、周りの調和を崩してしまう、そして、多大な迷惑をかけてしまう。
「そんなことはない、人は生きている以上みな、価値があるのだから。」
「お願い…します、頼みを…聞いて…ほしいのですが…。」
「なに?何でも、僕にできることであればするから。」
「先生、泣いても…いい…?」
私は先生に抱きついた、そして、声を殺して泣いた。
なぜだろう、涙が止まらない…。いじめられてるときは全然だったのに…。
先生は一瞬驚いたようだけど、私の髪を優しく梳いてくれている。
「すみません…、服…汚してしまいましたね…。」
先生の純白のワイシャツも私の血で赤く染まってしまっている。
「私はもう…駄目…。きっと…死んでしまうとおもう…。」
「そんなことはない、君は死なない。」
「いいんです…。きっとそっちのほうが…いいと思うから…。」
「死を望んではいけない、死は何も生まない、人は生きてこそ価値があるのだから」
「でも…、」
「…」
また、視界が暗くなっていく…。今度こそもう駄目だろう。
「先生…、伝えたかったことが…あるんですけど…。」
「なに…。」
先生も泣いているのだろうか、頬に何か熱いものが降って来ている…。
「好き…。私…男だけど…先生のこと…好きだった。…。」
「暁…。」
「暁?」
暁はもう返事をしてはくれなかった。その表情はなぜか、幸せそうであった。
「そうか、暁君にとって死は解放を意味するものだったのか…。」
先生は暁を抱いたまま、その廃屋を後にした。
「僕も、好きだった…」


5th chapter: The Judgment
ようやく、聖ペテロのいる、ヴァルハラへの門の前まできた。
聖ペテロはなにやら分厚い台帳をみている。おそらく私の経歴を調べているのだろう。
少ししてから聖ペテロが私を呼んだ、裁きが下されるのだろう。
「君は暁君だね」
「はい」
聖ペテロは私をみて、
「君はまだ若い。君のようなものがここにくるべきではない。なぜ、ここにきたのかな。」
きっと知っているのだろう、と思ったが、一応正直に答えておく。
「そうだったな、それで、君はその者たちを恨んでいるのか?」
そりゃそうだ、私をこのような目に合わせておいて、やつらはのうのうと笑っている。
しかし、やつらの周りの環境を見てみると、確かにストレスがたまるというのもわかる気がする。やつらの眼の奥には何かくらいもやがかかっているような気がするのも確かだ。
「そうだな。人は小さいときから愛情をたくさん受ければ受けるほど、思いやりを持ついい人になれる。彼らはその意味からすると、案外かわいそうなのかもしれないな。ただ、このようなことは決して許されることではない。よかろう、こちらのほうで手を打とう。安心してかえるがいい。」
 そう、聖ペテロがいったそのとたん、視界が真っ白になった。そして、次の瞬間、私は先生のうちにいた。体の痛みはなく、ただ先生が驚いたような顔でこちらを見ている。
「な、何が起こった?あれ傷が全部治ってるよ。」
先生がそういったところで私は、本当に生き返ったことを改めて知る。


6th chapter: Back To The New World
 私は、あの後、どのようなことがあったのか、先生に話した。
「…そんなことがあったんですか。そんな世界がるなんて知りませんでしたよ。傷が一瞬で全治するんだもの。認めないわけには行かないね…。今回はよかったけど、次、何かあったらいってね。少しでも力になれるようにするから。君は一人ではないのだから…。」
「ありがとうございます、でも、私のほうも、もっと強くなって自分で乗り切れるようにしたいと思っています。やっぱり何事も、正面から立ち向かわないと解決しないと思うので…。」
「まあ、なにわともあれ、よかったね…。」
そう、先生がいった。
次の瞬間、先生の手が私の頬に触れ、そして、唇が合わさっていた…。(キス…してる?)
「もう、ヴァルハラの門をたたくようなことはしないで、僕が君を守ってあげる…。」
「先生…。」先生は思いっきり慌てた様子で、離れる。そして、
「すまない、無理だろうとは思うが…気にしないでくれ。」
一瞬の沈黙の後、
「それより明日は学校がある、やつらを処罰せねばならない、少しでいいから、学校にきてくれないか。」
「あ、はい、いいですよ。私、きっと大丈夫ですから。」
「そうか、それじゃ、もう寝よう。二時回ってるし…。」
先生がそういったので私も時計を見てみる。確かに針は二時をさしている。
「うーん、これじゃあ、明日起きれないなあ…。」
「いや、大丈夫、ちゃんと起こしてあげるから。」
まあ、いいか。(苦笑)ということで私は先生と一緒に寝た。
横には先生がいる。今日はいつものように寒い思いをしなくてもすみそうだ…。
 翌日、案の定私は寝過ごしそうになり、慌てて食事をし、学校へ行った。私が学校に着くと、すかさず、例のやつらが私のところにきた。しかし、どうも様子がおかしい。いつもの、目の奥の暗いもやがなんだかはれているような感じがした。
一番最初に私を呼び出したやつが
「本当に、今まですまないことをした。俺、昨日夢で、ペテロとか言う天子からいわれたんだ。『人をいじめてなんになる。周りにはもっと楽しいことがあるはずだ。目を見開いてよくみたほうがよかろう。』と、そのあと、地獄にいかされてさ…。君がどんな気持ちでいたのかよくわかったよ…。」
ほかの生徒たちも私にしきりに謝ってくれた。
そのとき、聖ペテロが本当に、いろいろと私を助けてくれている事がわかった。
(聖ペテロよ、本当にありがとう)

その後、彼らは先生に呼び出され、きつく注意されていたが、そのご、彼らは他人をいじめるようなことは決してしなくなった。そして、私は、それ以来、学校が楽しくなった。何事にも挑戦し、壁にぶち当たっても正面から取り組むことができるようになった。
 
 私は、聖ペテロ、そして、先生に、心より感謝する。


後書き

一応、この小説テーマは、「心」ということで、書かせていただきました。
どうも暗いですねえ…(苦笑)。そうです、テーマが悪いんですよ(泣)
ちなみに、ヴァルハラへの道の周りの風景は宇宙の真っ只中を想像していただければ結構です。
やはり、文章表現が未熟かな…。まあ、その点はご勘弁ください。

残酷なのは何も知らない子、傲慢無神経な人。
トンネルは闇、抜けるとそこには光…。
そう、いつかきっといいことがある。
薄汚れた中で、深い純粋な心を持つ人がいる限り…
と私は信じております。
人はみな価値のあるものです。安易に傷つけるような行為はいけません。
それに、非行などよろしくない行動をする人も世の中にはいますが、その人の周りの環境に原因があるのであって、意外と根はよかったりする場合もありますね。見極めるのは大変だとは思いますが…。いえ、見極める必要もないかもしれませんね。
やはり、思いやりをもって接するのが大切ですね…。

注意1:この小説では、体育の存在を否定するような表現が使われておりますが、あくまで小説の主人公を体育が苦手という設定にしただけで、体育を否定することを目的とした小説では決してありませんので、誤解のないよう、よろしくお願いいたします。体を動かすことは心身ともにとてもよいことですよ。ただ、こういう考えの方も世の中には入るのではないかというひとつの考え方としてとらえていただければ幸いです。

注意2:この小説では後半部に一般的に言う若干気色悪いシーンも入っているかと思いますが、私はこういうのも存在してもいいと思っております。というのも、人を好きになるということはその対象となる人そのものを好きになることであって、性別などで付き合うか付き合わないかを決めるというのはおかしいと考えるからであります。たまたま好きになった方が運悪くも男性であったと、いうことですが、それでもいいではありませんか。女性だから好きとかいう考えより美しいと私は考えます。